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    「連行」(「手錠」⑤)

     部屋の扉が開く音が鳴った。涼花は思わず音のした方に顔を向けた。
    「放してっ、警察がこんな真似をするんですかっ! 誰ですか、あの女の人は?」
    「いいから、大人しくするんだ。今度有罪だったらムショ行きだぞ」
    「悪いことをしたのはお前だ、分かってるだろう」
     新たな容疑者が連行されてきたようだ。声からすると、若い女らしい。二人の男が女をこの部屋に勾引してきたと思われる。
    「あたし、そんなことしてませんってば。何かの間違いです!」
    「間違いかどうかを決めるのはおれたちであってお前じゃない。勘違いすんなよ」
    「証拠は残ってるんだ。言い逃れなんかせず、素直に吐いた方がいいぜ」
     新しい女を連行した二人の男は、涼花を逮捕した警官たちよりもドスの利いた声を響かせている。
    「お疲れ様です、班長。その女は何をやらかしたんですか?」
     太った方の声が耳のすぐ後ろから響いた。涼花の背後に回り、乳房を揉み、乳首を弾き転がしている。
    「イヤっ、何なの? 何で他の人が入ってくるの?」
     涼花の叫びを無視して、男たちのやり取りは続いていた。
    「盗撮だ。女性用スパの更衣室で、利用者の女の裸を盗み撮りしていやがった」
    「嘘ですっ!」
    「なら、何でお前のスマホに画像が保存されていたんだ?」
    「それは誰か別の人が……。痛いっ、止めてくださいっ」
     女は泣き声を上げた。本当なら酷い話だ。だが、女の必死の訴えを耳にすると、本当に冤罪ではないかという気がしてくる。涼花もほとんど言い掛かりのような容疑で逮捕された身であるだけに、余計そう感じるのかもしれない。あまりの成り行きに、涼花は新たな恐怖と羞恥に襲われた。
    「別の誰かがやったなら、その証拠を見せてみろ。どうせ、撮った写真を盗撮マニアか何かに売って小遣い稼ぎでもしていたんだろう」
    「お前もあの女みたいな格好にされたいか?」
     班長とその部下と思われる男の怒声が響き、どんという音とともに、床に何かが落ちるようなどさっという物音が響く。女が突き飛ばされたようだ。
    「痛いっ。本当に警察なんですか、あなたたち? あの女の人は何であんな風に縛られてるんですか? おかしいですよっ」
    「本来ならな、犯罪者は縄で縛り上げるもんなんだよ。手錠と腰縄くらいで済んでることをありがたく思え」
    「いやっ、もう外してください……。取り調べの時は手錠もなしですよね?」
    「それもそうだな。手錠は外してやるか」
     カチャカチャという金属音が鳴っている。手錠の鍵を外しているのだろう。
    「いやっ、何でっ? 手を離してえ」
    「言ったろ? 犯罪者を拘束する時は縄で縛るもんなんだよ」
    「あの女の縛られた姿、エロいだろ? お前も縛られたらもっとセクシーになるぜ」
     縄が擦れる音が涼花の耳を嬲る。今連行された女も、涼花と同様に縄で縛り上げられているようだ。
    「ほら、先客の女が尋問される様子でも見ていな」
     班長と呼ばれた男の声だ。
    「ああ、何をするのぉ……」
     女の声が近くなった。もしかすると涼花と同じように、天井から垂れた縄に繋がれているのかもしれない。
    「聞き分けのない女で困るぜ。ところで、その女は何をやらかしたんだ?」
    「この女、縄とかカッターナイフとか危険な物を持ち歩いてましてね。軽犯罪法でしょっ引きました」
    「そいつは穏やかじゃありませんね。何でそんな格好をしてるんですか、その女は?」
    「SMの女王様らしいんですよ、それが」
    「へえ、可愛らしい系の美人なのに、見かけによりませんね」
    「それだけじゃありませんよ。ちょっとこの女のオ×ンコを覗いてみてください」
    「おい、まさか、チ×ポが生えてるんじゃないだろな」
     班長が軽口を叩いた。脚を開いて固定され、丸出しになった股間に息が掛かるのに、涼花はそっぽを向いて耐えた。誰の目にも触れさせなかった部分が、今日だけで四人の男に見られることになる。耐えがたい羞恥だったが、身動きもできず視界も遮られたままだ。
    「へえ、こいつは驚いたぜ。処女膜がしっかり残ってやがる」
    「え、処女なんですか、この被疑者は? おれにも覗かせてください」
     班長の部下の男が涼花の股間に屈み込んでいるらしい。涼花は顔を左右に振り立て、身体を捩ったが、無駄な抵抗でしかない。
    「マジですか、処女の女王様なんてのがいるんですね! こりゃ、相当に珍しいじゃありませんか」
     その声は卑猥な調子を帯びていた。
    「それに、こんな状況なのにビッショリ濡らしてやがる。取り調べを愉しんでやがるんじゃないか、この女被疑者は」
     パンティの前の部分を擽られ、涼花は屈辱に喘いだ。
    「軽く揉んでやっただけでこうですからね。処女のくせに助平な身体をしてやがりますよ」
     長身の警官が涼花の反応を揶揄する。太った方が班長に言った。
    「この女、涼花女王様って源氏名なんですが、なぜこんな仕事をしてるのか尋問してるところなんですよ」
    「それは大事な点だな。早く吐かせちまえ。お前らのお手並み拝見だが、必要ならおれたちも手助けするぜ」
    「へへ、班長たちに手伝ってもらったら、この女は言わなくてもいいことまでゲロっちまいそうですね」
     太った方が下卑た声で班長に阿っている。髪の毛を掴まれ、乳房をギュッと握られる。己の恥ずかしい格好を他の警官と同性の容疑者の目に晒されながら、涼花女王様は恐ろしさに打ち震えるしかなかった。

    「羽根」(「手錠」④)

     まずは両耳が羽根で擽られ始めた。
    「いやっ、よしてっ」
     あまり性感帯として意識したことのなかった耳からもたらされる感覚は、思いのほか強烈だった。
    「耳がそんなに感じるのかな? エッチな身体をなさってますねえ、涼花女王様」
     太った方の声が耳元で響く。両手が自由なら払いのけてやるところなのに、背中で縛られた両手首を動かそうとしても、上半身の縄目がきつくなるだけだった。
    「ははは、無駄無駄。きっちり緊縛されちゃったら、簡単には縄抜けできないの知ってるだろう」
     長身が首筋に息を吹き掛けながら、涼花の抵抗を嘲笑する声が聞こえる。涼花は吐息からも逃れられないまま身悶えするしかなかった。
    「ところで、涼花女王様は、なぜ女王様なんかやってるんだ?」
    「関係ないでしょ」
     太った警官の問いを無視すると、羽根の一つは首筋を這い、もう片方は鳥肌の立った敏感な乳房を撫で回す。
    「優しくされてるうちに答えた方が無難だぜ」
     長身も先輩警官に加勢する。乳房の裾を這っていた羽根が乳首に押し付けられる。快感が背筋を走ったが、涼花は唇を噛んで辛うじて声を出すのを堪えた。視界を遮られるだけで、これだけ身体が敏感になるとは、想定していなかった。
    「あんたはまだ21歳だ。そんな若い女王様は滅多にいないんだよ。風俗をやるにしても、デリヘルやソープ辺りなら、まだ話は分かるんだがね」
    「そんな仕事したくないんです……。ああ、胸擽るの止めてっ」
    「そんな仕事だと? ヘルスやソープで働く女に失礼だな。お仕置きもんだぜ」
    「お仕置きしてほしいんじゃないですかね? SMの女王様って、プライベートではマゾだったりするらしいですし」
    「そうかもしれないな。さっきから羽根が乳首を触るたびに、電気に触れたみたいに身体が跳ねてるしな」
    「うぅっ……」
     涼花は呻いた。両方の乳房が羽根に襲われた。身体を捩っても、刺激からは逃れられない。乳首がどんどん充血して尖ってくるのが自分でも分かる。
    「あはんっ、イヤっ」
     乳首が指で転がされているらしい。
    「ほーら、色っぽい声が出ちゃった。ビンビンに尖ってますよ」
    「何だ、もう乳首触ってるのか。もう少し羽根だけで焦らしてやった方が面白かったのに」
     もう片方の乳首がぬめった感触に襲われた。吸い付くような卑猥な音が耳を犯す。
    「ダメ、何してるのよ!」
    「美味しそうな乳首を吸って舐めて差し上げてるんですよ、女王様」
     太った警官の卑猥な声が下の方から聞こえた。
    「そんなこと止めてぇ……。気持ち悪いっ」
    「気持ち悪いとは心外ですねえ、涼花女王様」
     もう片方の乳首も同じ感触に襲われる。警察官を名乗る見知らぬ男たちに乳首を舐めしゃぶられるおぞましい感覚に、涼花は嫌悪感に満ちた悲鳴を上げる。だが、警官たちがもたらす刺激がおぞましいだけではなく、快感に転じつつあることを否定できなかった。
    「で、さっきの質問に戻ろう。何であんたは女王様なんかやってるんだ? 確かにあんたは美人で背も低くはないがね、この身体の反応を見てるとM女っぽいぞ」
    「マゾ男に貢がせたいんじゃないですか? で、その金をホストにでも費やしてるんですよ。きっと」
    「そんなことしてません! 止めて、もうしないでえ」
     相変わらず乳首を舐めしゃぶられ、涼花は半泣きの声で訴えた。
    「泣きべそをかいてちゃ、女王様として恥ずかしいですよ」
    「もっと激しく責めてやらなきゃな」
    「きゃあっ」
     パンティの底が撫でられ始めた。両の乳房も羽根の刺激に曝されている。涼花は切羽詰まったような悲鳴を上げた。
    「もう湿ってきてるぞ、ここは」
     クロッチをずらされ、秘唇を羽根の動きが襲う。
    「止めて、そこだけはっ」
    「さっき身分証明書を確認したが、お前はミッション系の名門女子大に通ってるそうじゃないか。お嬢様のくせに金が必要なのか?」
    「やっぱりホストにでも貢いでるんじゃないですかね」
    「違いますっ! この世界に興味があったからなんです……」
     股間に這う羽根に腰を蠢かせながら、涼花は叫んだ。
    「ほぉ、お嬢様がお遊びで女王様のバイトとはねえ。もっと金を稼げる仕事もあるだろうに、同じ風俗でもな」
     肉芽が刺激され始めた。
    「そこ、触らないでっ」
     涼花は鋭く叫んだ。
    「触るなって言っても、クリちゃんもコリコリ固くなってるし、何やらヌルヌルしてるそ。感じてるんじゃないのか」
    「乳首もビンビンですよ。簡単に身体が反応するほど、女王様ってのは刺激に飢えてるんですかね」
    「イヤっ、ホントにそこは触らないでっ」
    「何を言ってるんだ、もうスケベな臭いを漂わせてからに」
     太った方の指が涼花の蜜壺に侵入し始めた。指は何度か中に入ってこようとしたが、その度に涼花は悲鳴を上げた。
    「お、おい、マジかよ」
    「どうしましたか?」
    「この女、処女だぜ。指が入っていかねえ」
     太った方の声は驚愕に彩られていた。
    「お前、初めてだな?」
     目隠しに覆われた目から涙を零しながら、涼花は二度三度頷いた。
    「ホントですか、これほどの女が」
    「いいから、お前も触ってみろ。そっとな」
    「お願い、もう止めてください……」
     またしても指が蜜壺を探ろうとした。涼花は腰を捩って逃れようとした。
    「本当ですねえ」
     長身も驚いたような調子で応じた。
    「まさか、処女の女王様がいるとはな」
     太った方が嘆息した。涼花女王様は泣き声を堪えつつも、流れる涙は止められなかった。

    「目隠」(「手錠」③)

    「こ、こんなことしてっ。あたしに何をするんですか?」
    「さっき言っただろうが、取り調べだよ」
    「痛い目に遭いたくなかったら、早めに白状した方がいいぞ」
     太った警官と長身の警官が嗤った。二人とも上着と制帽を脱ぎ、ネクタイも外して白のワイシャツ姿になっている。対して、涼花は二十畳ほどの部屋の真ん中あたりに吊されている。天井から垂れ下がったフックに縄尻を繋がれ、
     黒のガーターストッキングに両脚は肩幅より広く開かれ、それぞれの足首はコンクリートの床に取り付けられた革枷に固定されている。
    「何も白状することなんかありません。さっき言ったとおりです。それに、何ですか、この部屋は? まるで拷問部屋ですよ」
    「女王様のくせに拷問部屋を見て怖じ気づくなよ。これでも紳士的に事情聴取するつもりなんだがね」
     太った方が顔を歪めた。長身の方もそれなりに整った顔に陰惨さを貼り付けている。
    「だ、だって……」
     部屋の奥には鉄格子の嵌まった牢屋があり、片方の壁には鏡が張り巡らされている。そして、涼花の身体は鏡の方を向けられている。もう片方の壁には縄や鞭、枷などがぶら下げられている。プレイで用いられる部屋や道具とは異なり、遊びではなく、収容者を本気で屈服させる意思を感じさせる部屋であり道具立てだった。
    「革の衣装を着たままじゃ暑いだろう」
     長身の方が、コルセットの前面にあるファスナーに手を掛けた。
    「何するのよ、ヘンタイ!」
    「女王様にヘンタイ呼ばわりされるとは光栄ですねえ」
     ファスナーを胸の谷間にから臍のあたりまで下ろすと、黒いハーフカップのブラジャーに包まれた乳房がまろび出た。
    「イヤあっ」
    「Dカップくらいはありそうだぜ」
     背後から太った方が乳房を揉み立てる。
    「触んないで、ダメっ」
    「ふふふ、感じやすそうなおっぱいだな。マゾ男に吸わせたりしてるんじゃないだろうな」
    「そんなこと……してませんっ」
    「ここを舐めさせたりはしてないのか?」
     長身がしゃがみ込んでスカートを捲り、パンティの前を撫でた。
    「そこはイヤっ」
    「黒い紐パンとはエッチですねえ、女王様。何だかもうヤーらしい臭いが漂ってますよ、どうしたんですかあ?」
     長身は鼻先をパンティの船底に擦り付けるようにしながら言葉で嬲る。
    「こ、こんなに虐めるのが取り調べなのっ? おかしいでしょ」
    「あんたは男を虐めた上に、銃刀法違反までしでかしてるんだぜ。悪いことをしたら、その報いを受けるのは当然だろう。ほら、縛られて情けない格好の女王様、自分の姿を鏡で見てみたらどうだ?」
    「ああん、酷い……。止めてえ、それは止めてっ」
     ブラジャーのカップが引き下ろされる。白く柔らかそうな乳房が顔を出す。桃色の乳輪は小さいが、乳首は意外にふっくらとしている。
    「美味しそうなおっぱいだな。女王様には似つかわしくないぜ」
     乳房の根元から乳輪に掛けて渦を巻くように、太った方の手指が這い回る。
    「おや、パンティから漂う臭いが強くなってきましたよ、女王様」
     相変わらずパンティの前面を撫で回しながら、股間の臭いを嗅いでいる長身が指摘した。涼花は顔を左右に振りながら、声をかみ殺している。
    「あんっ」
    「どうしたのかな? 乳首がコリコリしてきたぞ」
     乳首を指先で転がされ、涼花は思わず呻いた。耳元には息を吹き掛けられたり、うなじにキスされたりしている。
    「触んないでっ、カッター持ってただけで何でこんなことを?」
    「そもそも何で、あんたは女王様なんかやってるのかな? ホントはこうやって嬲られる方が好きなんじゃないのか?」
     乳首から生じる刺激が背筋を貫く。股間は直接触られているわけではないが、鼻や口から吐き出される息が敏感な部分を微妙に刺激する。
    「もっと激しく責めてやりましょうよ。この涼花女王様、せっかく色んな道具を持ってるんですから」
    「いや、案外柔らかい責めの方が効くかもしれないぞ」
     涼花の乳首を捻り上げて悲鳴を搾り取ると、太った方は涼花の荷物の中から、先端に赤いファーの付いた長さ二十センチほどの棒を取り出した。主に擽り責めに使われる「フェザースティック」と呼ばれる道具だ。
    「ほほぉ、そんな物も持っていたんですか」
    「しかも4本もあるぜ。全身を擽り回してやろうか」
    「それはイヤですっ」
    「男にそういう責めをするから、こんな物を持ち歩いてるんだろ? たまには自分でも味わってみろよ」
    「ほら、鏡から目を逸らしてるけど、自分の姿を見てみろ」
     長身が背後に回り、涼花の髪の毛を掴んで正面の鏡に正対させた。
    「イヤだってばっ」
    「仕方ないな、見たくないならこうしてやろうか」
     太った方がキャリーバッグから取り出し、長身に手渡したのは、黒いレザー製のアイマスクだった。
    「見たくないなら、目が見えなくても問題ないわけだ」
     長身の手によって涼花に目隠しが施された。涼花は不安そうな面持ちで顔を振った。
    「もう少し可愛がってやりましょうか、この女王様を」
    「気長に責めてやるからぜ」
    「ああ、もう帰して……」
     涼花女王様は二人の警官に訴えた。もちろん、願いが聞き入れられそうにはなかった。

    「聴取」(「手錠」②)

    「ほぉ、こんなイヤらしい格好をしていたとはねえ」
     春物の薄手のコートを脱がされた女は、太った方の警官を睨み付けた。逮捕されて黒いワンボックスカーの後部座席に押し込められた際、後ろ手錠を一旦外されて前手錠を掛けられ、手錠と繋ぐ腰縄まで打たれた。その際、着ていたコートを脱がされ、肩に掛けられたのだ。
     そして、今は鉄格子の嵌まった取調室に押し込められ、座らされたパイプ椅子の背もたれに腰縄を繋がれている。手錠も外されないままだ。
    「し、仕方ないでしょ。時間がなかったんです……」
     女は顔を赤らめながら抗弁した。女が着ていたのは黒革のコルセットスカートと呼ばれる衣装で、胸から下までの上半身のボディラインを強調するよう腰の部分を絞ったコルセットに、同素材の短いスカートをセットアップしたものだ。
    「ふむ。ところで、あんたの源氏名は何というんだ?」
    「りょ、涼花です……」
     逮捕後、連行された薄暗い取調室で、涼花と名乗った女は消え入りそうな声で答えた。太った警官はニヤリと笑いながら重ねて訊いた。
    「縄とか鞭とか入っていたが、今日はどんなプレイをしたんだ?」
     警官は取調室に持ち込んだ涼花のキャリーバッグから、縄や革手錠を取り出し、机に並べ始めた。涼花は眉を曇らせながら答えた。
    「……縄で縛ったり、革手錠で拘束したりして、鞭で叩いたり、ロウソクを垂らしたりです」
     俯きつつ、声は消え入るように小さくなる。地味ながら整った顔は赤らみ、机の上に乗せた手錠の嵌まった両手を握りしめている。
    「ねえ、あたしが縄とかを持ってたのは、仕事のためなんです。関係ない人を縛ったりするつもりなんかありません。お願いです、帰してくれませんか?」
     涼花は両目に涙を溜めて抗議した。よく見ると、顔立ちはそれなりに派手に見えるが、化粧を落としたら童顔なのかもしれない。年齢も二十過ぎくらいだろう。
    「しかし、あんたがそういう物を持ち歩いていたのは事実だろう。しかも、荷物の中身を改めたら、こんな物まで入っていた。明らかに銃刀法違反だな」
     背の高い警官がキャリーバッグから、布に包まれた細長い物を取り出し、太った方に手渡した。布を取り去ると、ハサミが姿を現した。
    「こ、これは縄が絡まったり解けなくなったとき、切るためのものです」
    「しかしねえ、こういう物を持ち歩くだけで、犯罪になるんだよ。知らなかったのか?」
    「そんなっ……」
    「人を縛るための縄のほかにも、刃物まで持っていたとあっては、見逃すわけにはいけませんね」
     長身の警官の目付きが厳しくなる。
    「確かにそうだ。縄を切るためにハサミを所持していたということが証明できないと、いつまで経っても帰れないぞ」
     太った方が涼花を睨み付けた。
    「どうやって証明すればいいんですか」
     涼花の声は震えている。
    「まあ、少し落ち着きなさい。よく考えたら、まだ手錠を掛けたままだったな。おい、外してやれ」
    「はい」
     背の高い警官が涼花に歩み寄り、手錠を外し始めた。涼花はホッとした様子で両手首を労るように擦った。すると、両手は背中に捻じ上げられた。
    「何をするんですかっ!」
     長身の警官が涼花の両手首を腰の上で重ねるような形に押さえ付け、太った方が机の上の縄をそこに巻き付ける。縄はあっという間に胸の上に掛け回され、背後で縄留めされる。それだけで涼花は身動きできなくなった。
    「縛られるのは初めてなのか? こうされたらもう抵抗できないって分かってるだろう」
     縄が胸の下にも回され、二の腕と胴体の間にも掛けられると、ますます緊縛は厳しくなる。そして、背中から首の横を通った縄が、乳房の間に通され、胸の上下に掛かった縄を引き絞り、もう片方の首の横から再び背中の縄に固定される。後ろ手に縛られただけでなく、乳房を縦横に縄で固められた格好だ。背後で太った警官が言った。
    「ハサミを縄を切るために使ってるって言ったな。なら、自分で縄を切ってみせるんだ」
    「む、無理です、そんな……」
    「なら、ハサミは不法に所持してたことになるぞ、それでもいいのか」
     長身の方が薄笑いを浮かべながらハサミを机の上に置いた。涼花は縛られた身体を捩り、拘束された右手で何とか掴もうとする。だが、長身がハサミを取り、刃先をつまんで涼花の目の前で揺らした。
     涼花が歯噛みしていると、背後から縄尻を引き上げられ、椅子から立たされた。
    「どうやら無理そうだな。今からお前を本格的に取り調べる。覚悟しておけよ」
     背中をどんと突き飛ばされ、涼花はつんのめった。長身に身体を抱き止められ、顎をつままれて顔を上に向けられた。にやけ顔と人を馬鹿にしたような目と視線が合う。その顔に唾を吐きかけてやりたい気持ちを、涼花は何とか堪えた。

    「手錠」

     新宿・歌舞伎町のラブホテル街をキャリーバッグを引きながら、新宿駅方面に急ぐ若い女がいた。左手首の腕時計に目を落とした後に前を向くと、制服警官が二人立ちはだかっている。
    「お急ぎのところすみません、職務質問させてください」
     やや太めの警官が女に声を掛けた。
    「あたし、急いでるんですけど?」
     若干尖った声で返答した。
    「申し訳ありません、この辺りでちょっとした事件がありまして。すぐ終わりますので、ご協力お願いできませんか。何か身分を証明するものをお持ちでしたら、ご提示いただきたいのですが」
     もう一人の背の高い警官が妙に腰の低い調子で説得する。女は渋々肩に掛けたバッグから取り出した財布にしまっていた運転免許証を見せた。太った警官が懐中電灯でそれを照らして記載事項を確認すると、付け加えるように言った。
    「大変恐縮ですが、お荷物の中身を見せていただけませんか?」
    「それは……」
    「ちょっと拝見させていただくだけで構いません。ご協力を」
     長身の方も畳みかけてくる。女と警官二人はしばらく押し問答をしていたが、やがて根負けしたのか、女は仕方なさげにキャリーバッグを開いた。
    「これは何ですか?」
     長身が持ち上げたキャリーバッグの中身に照明を当てながら、太った方が訊いた。先端が幾つのも房に分かれた革製品だ。
    「……その、ちょっと叩いたりするものでして……」
    「叩く? ちなみにこれは何です?」
     太った方が風呂敷包みの結び目を解く。中からはエンジ色の麻縄の束が複数顔を覗かせた。
    「いや、これはちょっと結んだりするものでして……」
     俯いた女の答えは歯切れが悪い。
    「結ぶ? これは人を拘束するものではありませんか? 何のためにそんなことを?」
    「おや、この黒い革製品は何です?」
     背の高い方の問いに、太った方が上擦った声で応じた。
    「刑務所なんかで使われる革手錠に似てますねえ。あなた、何でこんなものを?」
    「仕事です」
    「何の仕事? 随分物騒なものをお持ちですねえ」
     女は顔を上げた。卵形で整った目鼻立ちをしている。髪の毛は肩の辺りまで垂らしているのが見える。
    「その、女王様をしてるんです……」
    「女王様って、SMの? 失礼ながら、そうは見えませんねえ。清楚でお綺麗なのに」
     太った方の態度が次第に無遠慮になってきた。女は少し憤然とした表情となっている。
    「あのう、もういいですか? 急いでるんですよ」
    「残念ながら、署にご同行いただくしかありません」
     キャリーバッグの蓋を閉めた後、長身の方が告げた。
    「な、何で?」
    「あなたは人を叩いたり、拘束したりできる物を持ち歩いている。これは詳しく話を訊かせてもらうしかありません」
    「そうしてほしい人がいるからなんです。何も悪いことはしていません」
     すると、太っている方が女の右手を背中にねじ上げた。
    「何するの? あたし、何も悪くないのにっ」
    「軽犯罪法違反の現行犯であなたを逮捕します」
     カチャリという冷たい音とともに右手首に金属が巻き付いてくる。手錠を嵌められたらしい。
    「言い分は署でゆっくり聞いてやる。大人しくするんだな」
    「そんな……」
     左手首にも続いて手錠を打たれた。女はその場にしゃがみ込みそうになりながら、言葉を継げなかった。両目には涙が浮かんでいた。

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