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    「指弄」(「水滴」⑤)

     カーペットの床の上に丸まりながら横たわっていると、身体が引き起こされた。半ば夢見心地だった中、腕からブラウスの袖が脱けていったかと思うと、麻那の両腕は背中にねじ上げられた。
    「いや、もういっぱいいっぱいなのに……」
    「厳しく縛ってやるから、早くシャッキリするんだよ」
     腰の上で交差させられた手首に掛かった縄は、二の腕ごと乳房の上に掛け回され、手首のところに戻って固定された。
    「んん……あんっ」
     麻那は首をもたげて顔を小さく振り、上半身を捩った。これだけでもう身動きができない。そう思うと全身にどっと汗が湧いた。身体の芯が再点火されてしまったのだ。目の前には姿見が立てかけられている。坂上がわざとその場所に移動させたのだ。
     続いて乳房の下に縄が掛かると、両脇の下でそれが引き絞られる。首の両側を通った縄が両乳房の間で上下の胸縄をまとめて結ばれる。Dカップの乳房が縄で上下左右を固められ、突き出る形となった。
     縛り上げられていく自らの姿を映し出されながら、麻那は陶然とした気持ちに陥りつつあった。身じろぎすると身体を縛り上げた麻縄が軋む音が鳴る。特に胸を締め付ける縄目の厳しさが増すように感じられる。
    「いやんっ」
    「乳首がまたコリコリになってるじゃない」
     背後から抱きかかえられるようにして、小指ほどの大きさに突き出した乳首を掌で転がされながら、麻那は坂上の指摘をイヤでも実感させられていた。上下左右を縄で固められた乳房はますます敏感さを増している。乳房を揉み嬲られ、勃起した乳首を指の間に挟まれて呻いていると、緩んでしまった股間に坂上の右手が侵入してきた。縛られ、嬲られる自らの姿を目にした麻那は、思わず叫んだ。
    「あんっ、イヤっ!」
    「中は随分熱いねえ。指がすんなり入っていくのはどういう訳?」
     中指が熱い粘液を吐き出している部分に潜り込む。そう言えば、麻那の体内に挿入されるのは、今日はこれが初めてだった。乳首を片手で摘ままれながら、指を一寸刻みに沈み込まされると、思わず蜜壺が反応してしまう。
    「何だ、今指がキュッと締め付けられたよ」
    「恥ずかしいっ」
    「クリちゃんなんか、すっかり皮が剥けちゃってるじゃない。見てごらん、縛られていじめられる麻那は、随分色っぽいねえ」
     中指が小刻みに抽送を始めつつ、親指の腹でその赤剥けの突起を擦られる。
    「あふん、ダメっ」
    「乳首はコリコリ、クリちゃんはピンピン、オマ×コはヌルヌル。はしたないよ」
    「焦らしてばっかりだからじゃない」
     麻那は俯きながら呟いた。上目遣いに前を見ると、鏡の中で坂上と目が合った。その視線を外すことはできなかった。
    「麻那の願いどおり、愉しませてあげてるんじゃないか、ん?」
     目の前に坂上の右手がかざされた。人差し指と中指を開くと、その間に半透明の白い雫が幾筋が糸を引いた。それが薬指と小指を伝って滴り落ちる。愉楽の証拠を突き付けられ、麻那は小さな悲鳴を上げて顔を背けた。それを追うように、粘液に光る指が麻那の唇を割った。
    「いやっ」
    「麻那のせいで、僕の指がこんなに濡れちゃったんだよ。しっかり舐めてきれいにするんだ」
     坂上の指は麻那の舌を捕らえ、粘液を口蓋に塗り付けられた。麻那は屈辱の呻きを漏らしながら、指を舐め、吸いしゃぶった。その指は再び麻那の肉芽を弾き、肉壺を抉った。麻那の喘ぎ声が高くなると指は引き抜かれ、また舐めさせられる。肉芽を転がし、秘裂をタップした指がまた差し入れられる。その一連の動作を坂上は何度か繰り返した。
    「ああんっ、もうイヤっ」
     指を小刻みに抽送されながら、麻那は鏡越しに視線で訴えた。指は時折曲げられ、Gスポットを刺激してくる。目は涙に潤み、眉は八の字となり、半開きとなった口からは昂ぶった荒い息が漏れる。髪はとっくに乱れきっている。坂上の指は麻那の体奥を数回突いた後、スッと抜き去られた。
    「もう少しだったのにっ」
     絶頂への道筋を寸断され、麻那は叫んだ。
    「こんな指なんかで逝ったら面白くないだろう? その前に僕を気持ちよくしてもらわなきゃな」
    「だって……」
     むずかる麻那の喉元をくすぐると、坂上はバッグからバイブを取り出した。長さは10センチほどの細身のものだったが、それを見た麻那の目に期待の色が宿った。
    「僕を気持ちよくしてくれたら、これで逝かせてやろう。指よりこっちの方が強烈だよ」
    「あむっ」
     スイッチを入れて震動させたバイブを乳首に押し当てられ、麻那は仰け反った。
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