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    「目隠」(「手錠」③)

    「こ、こんなことしてっ。あたしに何をするんですか?」
    「さっき言っただろうが、取り調べだよ」
    「痛い目に遭いたくなかったら、早めに白状した方がいいぞ」
     太った警官と長身の警官が嗤った。二人とも上着と制帽を脱ぎ、ネクタイも外して白のワイシャツ姿になっている。対して、涼花は二十畳ほどの部屋の真ん中あたりに吊されている。天井から垂れ下がったフックに縄尻を繋がれ、
     黒のガーターストッキングに両脚は肩幅より広く開かれ、それぞれの足首はコンクリートの床に取り付けられた革枷に固定されている。
    「何も白状することなんかありません。さっき言ったとおりです。それに、何ですか、この部屋は? まるで拷問部屋ですよ」
    「女王様のくせに拷問部屋を見て怖じ気づくなよ。これでも紳士的に事情聴取するつもりなんだがね」
     太った方が顔を歪めた。長身の方もそれなりに整った顔に陰惨さを貼り付けている。
    「だ、だって……」
     部屋の奥には鉄格子の嵌まった牢屋があり、片方の壁には鏡が張り巡らされている。そして、涼花の身体は鏡の方を向けられている。もう片方の壁には縄や鞭、枷などがぶら下げられている。プレイで用いられる部屋や道具とは異なり、遊びではなく、収容者を本気で屈服させる意思を感じさせる部屋であり道具立てだった。
    「革の衣装を着たままじゃ暑いだろう」
     長身の方が、コルセットの前面にあるファスナーに手を掛けた。
    「何するのよ、ヘンタイ!」
    「女王様にヘンタイ呼ばわりされるとは光栄ですねえ」
     ファスナーを胸の谷間にから臍のあたりまで下ろすと、黒いハーフカップのブラジャーに包まれた乳房がまろび出た。
    「イヤあっ」
    「Dカップくらいはありそうだぜ」
     背後から太った方が乳房を揉み立てる。
    「触んないで、ダメっ」
    「ふふふ、感じやすそうなおっぱいだな。マゾ男に吸わせたりしてるんじゃないだろうな」
    「そんなこと……してませんっ」
    「ここを舐めさせたりはしてないのか?」
     長身がしゃがみ込んでスカートを捲り、パンティの前を撫でた。
    「そこはイヤっ」
    「黒い紐パンとはエッチですねえ、女王様。何だかもうヤーらしい臭いが漂ってますよ、どうしたんですかあ?」
     長身は鼻先をパンティの船底に擦り付けるようにしながら言葉で嬲る。
    「こ、こんなに虐めるのが取り調べなのっ? おかしいでしょ」
    「あんたは男を虐めた上に、銃刀法違反までしでかしてるんだぜ。悪いことをしたら、その報いを受けるのは当然だろう。ほら、縛られて情けない格好の女王様、自分の姿を鏡で見てみたらどうだ?」
    「ああん、酷い……。止めてえ、それは止めてっ」
     ブラジャーのカップが引き下ろされる。白く柔らかそうな乳房が顔を出す。桃色の乳輪は小さいが、乳首は意外にふっくらとしている。
    「美味しそうなおっぱいだな。女王様には似つかわしくないぜ」
     乳房の根元から乳輪に掛けて渦を巻くように、太った方の手指が這い回る。
    「おや、パンティから漂う臭いが強くなってきましたよ、女王様」
     相変わらずパンティの前面を撫で回しながら、股間の臭いを嗅いでいる長身が指摘した。涼花は顔を左右に振りながら、声をかみ殺している。
    「あんっ」
    「どうしたのかな? 乳首がコリコリしてきたぞ」
     乳首を指先で転がされ、涼花は思わず呻いた。耳元には息を吹き掛けられたり、うなじにキスされたりしている。
    「触んないでっ、カッター持ってただけで何でこんなことを?」
    「そもそも何で、あんたは女王様なんかやってるのかな? ホントはこうやって嬲られる方が好きなんじゃないのか?」
     乳首から生じる刺激が背筋を貫く。股間は直接触られているわけではないが、鼻や口から吐き出される息が敏感な部分を微妙に刺激する。
    「もっと激しく責めてやりましょうよ。この涼花女王様、せっかく色んな道具を持ってるんですから」
    「いや、案外柔らかい責めの方が効くかもしれないぞ」
     涼花の乳首を捻り上げて悲鳴を搾り取ると、太った方は涼花の荷物の中から、先端に赤いファーの付いた長さ二十センチほどの棒を取り出した。主に擽り責めに使われる「フェザースティック」と呼ばれる道具だ。
    「ほほぉ、そんな物も持っていたんですか」
    「しかも4本もあるぜ。全身を擽り回してやろうか」
    「それはイヤですっ」
    「男にそういう責めをするから、こんな物を持ち歩いてるんだろ? たまには自分でも味わってみろよ」
    「ほら、鏡から目を逸らしてるけど、自分の姿を見てみろ」
     長身が背後に回り、涼花の髪の毛を掴んで正面の鏡に正対させた。
    「イヤだってばっ」
    「仕方ないな、見たくないならこうしてやろうか」
     太った方がキャリーバッグから取り出し、長身に手渡したのは、黒いレザー製のアイマスクだった。
    「見たくないなら、目が見えなくても問題ないわけだ」
     長身の手によって涼花に目隠しが施された。涼花は不安そうな面持ちで顔を振った。
    「もう少し可愛がってやりましょうか、この女王様を」
    「気長に責めてやるからぜ」
    「ああ、もう帰して……」
     涼花女王様は二人の警官に訴えた。もちろん、願いが聞き入れられそうにはなかった。

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