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    「聴取」(「手錠」②)

    「ほぉ、こんなイヤらしい格好をしていたとはねえ」
     春物の薄手のコートを脱がされた女は、太った方の警官を睨み付けた。逮捕されて黒いワンボックスカーの後部座席に押し込められた際、後ろ手錠を一旦外されて前手錠を掛けられ、手錠と繋ぐ腰縄まで打たれた。その際、着ていたコートを脱がされ、肩に掛けられたのだ。
     そして、今は鉄格子の嵌まった取調室に押し込められ、座らされたパイプ椅子の背もたれに腰縄を繋がれている。手錠も外されないままだ。
    「し、仕方ないでしょ。時間がなかったんです……」
     女は顔を赤らめながら抗弁した。女が着ていたのは黒革のコルセットスカートと呼ばれる衣装で、胸から下までの上半身のボディラインを強調するよう腰の部分を絞ったコルセットに、同素材の短いスカートをセットアップしたものだ。
    「ふむ。ところで、あんたの源氏名は何というんだ?」
    「りょ、涼花です……」
     逮捕後、連行された薄暗い取調室で、涼花と名乗った女は消え入りそうな声で答えた。太った警官はニヤリと笑いながら重ねて訊いた。
    「縄とか鞭とか入っていたが、今日はどんなプレイをしたんだ?」
     警官は取調室に持ち込んだ涼花のキャリーバッグから、縄や革手錠を取り出し、机に並べ始めた。涼花は眉を曇らせながら答えた。
    「……縄で縛ったり、革手錠で拘束したりして、鞭で叩いたり、ロウソクを垂らしたりです」
     俯きつつ、声は消え入るように小さくなる。地味ながら整った顔は赤らみ、机の上に乗せた手錠の嵌まった両手を握りしめている。
    「ねえ、あたしが縄とかを持ってたのは、仕事のためなんです。関係ない人を縛ったりするつもりなんかありません。お願いです、帰してくれませんか?」
     涼花は両目に涙を溜めて抗議した。よく見ると、顔立ちはそれなりに派手に見えるが、化粧を落としたら童顔なのかもしれない。年齢も二十過ぎくらいだろう。
    「しかし、あんたがそういう物を持ち歩いていたのは事実だろう。しかも、荷物の中身を改めたら、こんな物まで入っていた。明らかに銃刀法違反だな」
     背の高い警官がキャリーバッグから、布に包まれた細長い物を取り出し、太った方に手渡した。布を取り去ると、ハサミが姿を現した。
    「こ、これは縄が絡まったり解けなくなったとき、切るためのものです」
    「しかしねえ、こういう物を持ち歩くだけで、犯罪になるんだよ。知らなかったのか?」
    「そんなっ……」
    「人を縛るための縄のほかにも、刃物まで持っていたとあっては、見逃すわけにはいけませんね」
     長身の警官の目付きが厳しくなる。
    「確かにそうだ。縄を切るためにハサミを所持していたということが証明できないと、いつまで経っても帰れないぞ」
     太った方が涼花を睨み付けた。
    「どうやって証明すればいいんですか」
     涼花の声は震えている。
    「まあ、少し落ち着きなさい。よく考えたら、まだ手錠を掛けたままだったな。おい、外してやれ」
    「はい」
     背の高い警官が涼花に歩み寄り、手錠を外し始めた。涼花はホッとした様子で両手首を労るように擦った。すると、両手は背中に捻じ上げられた。
    「何をするんですかっ!」
     長身の警官が涼花の両手首を腰の上で重ねるような形に押さえ付け、太った方が机の上の縄をそこに巻き付ける。縄はあっという間に胸の上に掛け回され、背後で縄留めされる。それだけで涼花は身動きできなくなった。
    「縛られるのは初めてなのか? こうされたらもう抵抗できないって分かってるだろう」
     縄が胸の下にも回され、二の腕と胴体の間にも掛けられると、ますます緊縛は厳しくなる。そして、背中から首の横を通った縄が、乳房の間に通され、胸の上下に掛かった縄を引き絞り、もう片方の首の横から再び背中の縄に固定される。後ろ手に縛られただけでなく、乳房を縦横に縄で固められた格好だ。背後で太った警官が言った。
    「ハサミを縄を切るために使ってるって言ったな。なら、自分で縄を切ってみせるんだ」
    「む、無理です、そんな……」
    「なら、ハサミは不法に所持してたことになるぞ、それでもいいのか」
     長身の方が薄笑いを浮かべながらハサミを机の上に置いた。涼花は縛られた身体を捩り、拘束された右手で何とか掴もうとする。だが、長身がハサミを取り、刃先をつまんで涼花の目の前で揺らした。
     涼花が歯噛みしていると、背後から縄尻を引き上げられ、椅子から立たされた。
    「どうやら無理そうだな。今からお前を本格的に取り調べる。覚悟しておけよ」
     背中をどんと突き飛ばされ、涼花はつんのめった。長身に身体を抱き止められ、顎をつままれて顔を上に向けられた。にやけ顔と人を馬鹿にしたような目と視線が合う。その顔に唾を吐きかけてやりたい気持ちを、涼花は何とか堪えた。

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