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    呼吸(「水滴」④)

    「ジンジンするぅ……。何これっ?」
    「ハッカ油さ。痛痒いのも悪くないだろう?」
     虫刺されなどに効果のある液体を坂上があらかじめ水で薄めたものだ。簡単に種明かしした坂上は乳房を噛んでいる洗濯ばさみを取り外すと、小指の先ほどに長く伸びた乳首に吸い付いた。
    「あんっ」
     坂上の唇が乳首全体を包み、舌がその先端を舐め転がす。前歯が乳首の根元を噛む。その間、指は蟻の門渡りの付近を刺激し、繊毛をまさぐる。だが、最も慰めてもらいたい感覚は放置されたままだ。
    「あん、クリ触って……」
    「反抗した口が何を言ってるのかな?」
     坂上は麻那の横で丸まっているショーツを拾うと、その舟底部分を広げながら麻那の鼻先に突き付けた。
    「見たくないっ」
    「見るんだよ。こんなに濡らしちゃって、麻那は僕よりエッチだなあ」
    「坂上さんが意地悪ばっかりするんだもん……」
    「そういう口答えができないようにしようか」
     坂上は麻那の鼻を摘まむと、開いてしまった口に丸めたショーツを詰め込んだ。顎の先を掴んで口を閉じる動きを封じ、ショーツをさらに奥に押し込むと、真ん中に結び目を作った手拭いを綺麗に整った歯列に噛ませた。
    「自分のマ×汁は美味しいかな? パンツの裏が舌に当たるようにしてるから、じっくり味わえるよ」
     麻那の頭の後ろで手拭いをきっちり結びながら、坂上は嗤った。細いがハッキリとした弧を描く眉根が寄せられ、目に込められた恨みの感情が色濃くなる。
    「うぅ……」
     抗議したくても、呻くことしかできない。塩気のある粘液が舌に絡み付くたび、麻那は羞じ悶えた。すると、ヒリヒリした感覚に震える肉芽が柔らかい感覚に包まれた。書道用の筆が充血しきった肉芽の先端に踊っていた。細く柔らかい毛の一本一本が、繊細な知覚が集まった部分に働きかけてくる。体内からドクッと恥ずかしい滴りが迸ってくるのを、麻那は自覚していた。熱い粘液は陰部を伝い、後門を走り抜ける。頭の隅に追いやっていた羞恥心が再び顔を出す。
    「クリちゃん、さっきより大きくなってるぜ。ビンビンに勃起しちゃって」
    「ひはあっ(いやあっ)!」
     不自由な腰を揺らしながら、麻那は叫んだ。しかし、悲鳴は猿轡に遮られる。すると肉芽をさらなる痒みと痺れが襲った。またハッカ油を吹き付けられたのだ。涼感が秘口のあたりにも波及してきた。坂上の指が液体を肉芽だけでなく、秘裂全体に塗り広げているからだ。
    「オマ×コが痺れてくるだろう?」
     坂上は嗤いながら、筆で秘裂を縦になぞったり、ハッカの吹き付けられた指で肉芽を揉み転がしたりした。
    「ふふひて(ゆるして)……」
     嬲り者にされていることは分かっていても、哀訴せずにはいられない。指は秘口を擽り、秘裂の襞をめくり返した後、後門にあてがわれた。猿轡で口呼吸が不自由になり、喘ぎ声を十分に出せないせいか、刺激され続けている感覚が沸騰するのが早い。
    「ほほやへへ(そこやめて)……」
    「何を言ってるのか分かんないなあ」
     猿轡を噛ませて麻那の口を封じておきながら、坂上は惚けた。胡座縛りで転がされた麻那の身体全体が汗にぬめ光り、不自由な中で揺さぶられている。ストッキングに包まれたまま交差させられた足先は、何度も丸まる動きを繰り返していた。太腿は筋肉を緊張させている。
    「ほら、自分のオマ×コを見るんだ」
     麻那の身体を床から離して背中を支えながら、坂上はすっかり乱れた髪の毛を掴んで顔を下に向けさせた。霞んだ目に、熱い白濁液を湧出し続けながらヒクヒクと痙攣する陰部が映る。その淫らな様相に思わず顔を背けようとしても、強い力がそれを許さない。
    「自分のスケベさが分かるだろう、これを目の当たりにしたら?」
     麻那は涙を流しながら頷いた。坂上の言葉を否定したところで、さらなるいたぶりに泣かされるだけだ。身体の中心から全身を蝕んでくる痺れが、既に麻那の反抗心を萎えさせていた。
    「なら、こいつはどうかな」
     坂上がローターのコントローラー部分をつまみ、ローターの振動部分を垂らして肉芽に触れるか触れないかの辺りにぶら下げた。片方の手で乳首を揉み立てる。焦れったい刺激だが、焦らされ続けた麻那の性感はあっという間に噴き上がった。
    「らへっ(だめっ)!」
     麻那は顔を左右に振り立てながら、爪先を丸めた。胡座に組まされた脚が震え、腰が小刻みに揺れた。背筋が反り、仰け反った頭が坂上の胸元に収まった。足首と背中を繋ぐ縄がピンと張る。猿轡を何度も噛みしめ、やがて歯を食い縛った。
    「ひうっ(逝くっ)……!」
     既に何も見ていない目の前が真っ白になった。背筋に熱い箭が走り抜け、脳が温かいもやに包まれ、全身が脱力する。身体の芯で溜まり滾ったものが一気に爆発したのだ。鼻から息を吐きながら、身体が揺れていることすら、麻那は自覚していなかった。
     坂上は猿轡の手拭いを口から外し、ショーツを取り出した。麻那はぜえぜえ言いながら息を吐き出した。肩を上下させ、胸腔に空気を送り込む動きが麻那を抱いた坂上にも伝わる。何度か深呼吸するのを見守った後、坂上は言った。
    「もう一度、逝くときの声を聴かせるんだ」
     坂上はいったん離していたローターを肉芽に押し当てた。
    「ああああっ、ダメっ、い、い、いっ……」
     乳首が捻り上げられた。ローターの振動が強まった。
    「ああっ、ダメダメダメっ! 逝く……。逝くっ、逝っちゃうっ、許してっ!」
     坂上の胸の中で麻那は汗まみれの顔を振りながら、身体を痙攣させた。もう何も考えられないのだろう。噛み縛った唇の端からは涎が垂れ落ち、目は大きく見開かれていた。股間から流れ出た樹液が、麻那の尻の下で小さな染みを作っていた。
     フラッシュが光った。坂上がスマホのカメラで淫情に破れた麻那の凄惨な色気を放つ姿を撮影しているのだ。にわかに羞恥を覚えた麻那は抗議しようと思ったが、代わりに口から出てきたのは荒い息遣いだけだった。
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