「痛いっ、こんなのイヤぁ……」
麻那は双眸に涙を浮かべながら、緊縛された上半身を左右に捩った。
「すぐに気持ち良くなるよ。洗濯ばさみのバネは相当に弱くしてあるからな」
坂上は訴えに取り合おうとしなかった。洗濯ばさみは乳房に対して垂直になる形で食い込んでいる。しばらく経つと痛みに慣れてきたのか、苦痛は乳首を指で強く摘ままれた程度に和らいだ気がした。しかし、痛みが完全に快感に転化したわけではない。麻那は表情を歪めながら、涙に霞んだ目を坂上に向けた。
「ちょっと痛いか。なら、こいつは止めよう」
坂上は両乳首から洗濯ばさみを外した。麻那がホッと一息を吐いたところで、再び乳首が苦痛に襲われた。
「止めるって言ったじゃないっ!」
「挟み方を変えるって意味さ」
今度は洗濯ばさみが乳房と水平に取り付けられている。先端近くの輪になった部分で乳暈から挟むような格好だ。赤く充血した乳首の先が絞り出され、少しだけ顔を出している。
「これなら大して痛くないはずだよ」
露頭させられた乳首が指先でそっと転がされた。
「んんっ……」
麻那の背後に回った坂上が、首筋に唇を這わせながら乳首を愛撫し始めた。豊かな髪の毛から漂うシャンプーの香りに、ほのかな体臭が混ざりつつある。乳首を強く摘ままれたり、根元を噛まれたりすると、桃色に染まった全身が汗ばんでくる女だ。洗濯ばさみはそれ以上の効果をもたらしているようだ。
「ますます乳首が立ってきてるじゃないか。洗濯ばさみを弾き飛ばしそうなくらいだよ」
「ああんっ、もう外してくださいっ。イヤん、そこダメっ」
「このシャリシャリした手触りもいいねえ。あれ? 何だか湿ってないか?」
坂上の右手がショーツの中に潜り込み、繊毛をかき混ぜている。だが、手は秘唇に伸びそうでいながら、その直前で踏みとどまっている。麻那は腰を揺すって喘いだ。
「シャリシャリも悪くないけど、ツルツルも嫌いじゃないんだ。また剃り上げてやろうかな」
「それ、許してぇ」
「ツルツルにされた後、何日か経ってザラザラしたのも良いんだよな」
「イヤっ、イヤっ」
数ヵ月前、歌舞伎町のラブホテルで椅子に開脚で縛られ、剃毛された時の羞恥が麻那の脳裏に蘇る。自らアンダーヘアを整えることはあっても、それを他人の手で剃られるのは恥ずかしい。まして、剃られながら敏感なところを悪戯され、意に反して示してしまった身体反応をからかわれるのだ。
「いっ、いいっ!」
「やっぱり、クリちゃんピンピンにさせてるねえ。指先で跳ねるようだよ」
坂上の指が肉芽を捉えた。後ろから後頭部を掴まれ、顔を下に向けさせられる。視線の先では、ショーツのクロッチ部分が小刻みに浮き上がり、見えないところで指先が卑猥に蠢いている様子だ。肉芽を柔らかく刺激していた指の回転が次第に速まっていく。
「あんっ、んん……」
後頭部に加えられていた力が消え、麻那は顔を左右に振りながら喘ぎ声を噴き出させた。すると、ブーンと振動音が鳴り、やがてカタカタという音が共鳴した。
「んっ、ああんっ!」
麻那の頭から離れた坂上の左手がピンクローターを乳首に噛まされた洗濯ばさみに押し当てられていた。
「ほーら、洗濯ばさみはもうイヤじゃないだろ?」
根元を絞り上げられた乳首が、淫らな振動に晒されている。坂上の言うとおり、苦痛よりも快感の方がはるかに勝っていた。一方で、肉芽の根元は人差し指と薬指に押さえられ、露頭した肉芽の先に中指が熱い粘液を塗り付けている。
「随分あったかいねえ、麻那のここ。ローターを当てたら、もっと熱っぽくなりそうだな」
「それはダメっ」
「ホントはクリちゃんをもっと激しく擦ってほしいんじゃない?」
肉芽の根元を挟む力が強くなった。
「あん、もっと優しくっ」
「痛いのか?」
麻那のそこは刺激に強いはずだった。
「違うの……。あん、もっとゆっくり、ねえ」
麻那は俯きながら首を振った。
「そうか、まだ逝きたくないのかな?」
小さな頷きが返ってきた。
「そういうときはね、『もっと愉しませてください』っておねだりするんだ」
「……愉しませてください……」
「焦らしてほしいなんて、エッチだねえ」
ショーツ越しにローターをあてがわれた。
「あん、ローターはダメですっ!」
すぐに振動は去る。ホッとしていると、再び振動が肉芽を襲ってくる。
「ダメ、逝きそうっ! あむっ……」
「ゆっくり弄られるより、寸止めを繰り返された方が気持ちいいよね? 今日は逝かせてあげないよ。言わば『限りなくアクメに近い寸止め』ってやつを、ずっと味わってもらおう」
「おかしくなっちゃうっ!」
「そう言いながら発狂した女は、今までいなかったよ。君の『愉しませてください』ってそういう意味だよな?」
「い、ひぃっ、あうんっ。もう許してえ……」
麻那が絶頂を迎えようとするたび、肉芽への振動はふっと消え去ってしまう。麻那は涙を浮かべながら、坂上への哀願を繰り返した。自らが坂上に告げた言葉を後悔しながら。
「今度はローターをクリちゃんに直接あてがってみよう。ますます愉しめるかな?」
坂上は笑いながらローターを麻那の鼻先に突き付けた。熱い淫蜜に濡れた玩具は、彼女自身の強い牝臭を放っていた。
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