早季の足元近くの背の低い小さなテーブルの上に置かれたタイマーは、1分にセットされた。ピンクローターやバイブ、毛先を解した筆など早季を責める道具とともに並べられた。
先攻を申し出た美冴が、「やち責め」の口火を切ることになった。一方が早季の下半身を責めている間、もう一方は上半身を愛撫するのが基本ルールと決まった。
「ふふっ、改めてよろしくね、早季さん」
奥村がタイマーのスイッチを押した直後、しゃがみ込んだ美冴は、邪気のない眼差しで前に立たされた早季を見上げた。早季は涙を浮かべながら顔を背けている。セミロングの髪を撫で付けながら奥村は乳房をまさぐっている。
「色っぽいわね、紐パンなんて。あたし、もうこんなの穿けないわ」
ワンポイントの刺繍が入ったオフホワイトのショーツの前部に浮かび上がる黒い部分を撫で回しながら、美冴は早季をからかう。
「いきなりクリちゃんにローションを塗り付けて弄ったりしないから、安心して。まず、こういうのはいかがかしら?」
美冴はローズピンクに塗られた長い爪で、ショーツの上から肉芽を軽く引っ掻いた。薄い布越しの愛撫が醸し出す感覚でも、容赦なく早季の背筋を貫いてくる。
「ああ、止めてください……」
「あら、そんなこと言う? あたし、最近はこうやってオナニーしてるんだけど、結構気持ち良くない?」
中指の爪でショーツの二重底部分をカリカリと掻きながら、美冴は早季に問いかけた。それに合わせるように、背後から早季の上半身に取り付いた奥村が、両掌で乳首の頭をクリクリと転がしてくる。
「ああ、イヤです……。触らないでっ!」
「早季さんだって、オナニーぐらいするでしょ? これが良かったら、真似してみてもいいわよ」
「もう乳首がビキビキに勃起してるじゃん。美冴に責められるのも満更じゃないだろ?」
「爪の先でしか触ってないのに、コリコリって感触が伝わってくるわよ。もうおマメちゃん起っちゃった? それとも、元々大きいのかしら?」
「イヤらしいことばっかり言って……。もう許して」
そのとき、1分経過を知らせるタイマー音が鳴った。
「あら、1分ってこんなに早いのね。もう少し触ってあげたかったのに」
「これは競争だって。1人で逝かせちまっても詰まんないだろ」
「それもそうね」
再びタイマーをセットした奥村は、早季の尻の方から右手を差し入れてきた。
「あぁんっ……」
奥村の中指が下からショーツ越しに早季の肉芽を刺激している。第一関節の腹でポイントを捉え、リズミカルに蠢く指は、電車内で女性に悪戯する卑劣な痴漢のもののようだ。
「その指の動き、凄いエッチ」
「美冴もこうされるの好きなくせに」
「あはは、あたしの秘密を暴露してる、奥村さん」
「早季もこれ、嫌いじゃないよな?」
「嫌い、大っ嫌いっ!」
「そう言いながら、腰の動きが艶めかしくなってきたわよ、早季さん」
上気する早季の頬をつつきながら、美冴は長い爪で挟むように乳首を摘まんだ。
「ひぃぃ、イヤですってばっ」
「奥村さんが言ったとおり、乳首はもうピンピンのくせに。早季ちゃんも随分エッチじゃない」
早くも馴れ馴れしい呼び方に変わったのが口惜しかった。だが、その屈辱が、奥村の指が送り込んでくる快感を増幅していることも、早季には決して否定できなかった。早季の拒絶の悲鳴には次第に荒い呼吸が混じり、喘ぎ声となりつつあった。
「おいおい、こんなに早くよがっていいとは言ってないぜ。それに、触ってると妙にヌルヌルしたのが絡み付いてくるぞ。何だい、これは?」
「知らないっ」
またタイマーが1分経過を告げた。今の早季は、既に防戦一方のボクサーがゴングに救われたような状態だった。
「まだダウンするなよ。引導を渡すのは、おれの方だからな」
奥村は頬の筋肉を吊り上げ、卑しげな笑顔を作った。
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