「最初はこれで行こうか」
木内が取り出したのは柄の部分が木製の刷毛2本だった。
「こんなもんでいいんですか?」
角井がにやけ面で1本の刷毛を受け取りながら言った。
「持ち時間は20分もあるんだ。最初から激しく責めて逝かせても面白くないだろう?」
「それもそうですね」
「バイブなんかを使うのも控えようか」
「この女ども、却って欲求不満になるかもしれませんよ」
「それも一興だよ」
木内は奈々美の、角井は赤川の背後にそれぞれ回った。傍に置かれたテーブル上に置かれたノートパソコンの画面上には、大きく「20:00」という数字が表示されている。
「お前らにも時間はきちんと示してやる。誤魔化したりはしないから心配するな。いや、むしろ時間内に逝かされないよう心配した方がいいな」
角井と原は木内に追従するように下品な笑い声を上げた。2人の女は歯を食いしばりながら、そんな男たちから顔を背けている。
「ふふふ、お前らは敵同士のくせに、似たような反応をしてるな。同じチ×ポを咥え込んでたせいかな。今からスタートだ」
木内がノートパソコンの画面にタッチすると、20分間のカウントダウンが始まった。先ほどと同様、原は2人の姿をテレビカメラで撮影している。
「ん……くくっ」
角井の刷毛が赤川の耳たぶを這い回る。唇を噛みしばった顔が仰け反る。耳朶に嵌まった小ぶりなピアスに埋め込まれた石が煌めく。奈々美は顔を背けながらも、その様子を目の端で捉えていた。
「ひぃっ」
奈々美の首筋にゾクリとする感覚が走る。
「目を背けていないで、前を見るんだよ」
髪の毛を掴まれ、顔を正面にねじ向けられる。上半身を重罪人の女囚の如く厳重に縛り上げた縄の食い込みが痛々しい。上下を締め上げられたやや小ぶりな乳房は大きく膨らみ、青筋を立てて斜め上に飛び出している。色素の沈着が薄い乳首は早くも充血し、サクランボのように膨らんでいるのが卑猥だ。そして、両膝を椅子の肘掛けに括り付けられたため、すっかり丸出しになった股間は赤く色づき、まだ触られていないにも関わらず、うっすらと湿り気を帯び、小さく蠢いているように見える。責めの手を待ち望んでいるのだろうか。赤川が晒している恥辱の緊縛姿は、奈々美自身の写し絵でもあった。
「見せないで、恥ずかしいっ」
「そりゃそうだろう。お前も同じ恥ずかしい格好に縛られてるんだからな。下手に人の恨みを買うと、こんな目に遭うんだよ」
木内が耳元で囁きながら、片方の耳朶や耳孔を擽ってくる。奈々美は顔を振り立てたが、刷毛の穂先から逃れることは出来ない。最初は擽ったさしかもたらさなかった刺激は、早くも性感を煽り立てるものに変化していた。
「そんなことしたって感じないわよ!」
角井の操る刷毛は赤川の乳房の裾から頂点に掛けて渦を巻くように這い上っている。両方の乳房に同じ責めを繰り返されるものの、赤川は気丈にも角井を睨み付けている。刷毛が赤川の乳首を掠めるように奔った。角井を睨む瞳がかすかに揺らいだ。
「もっと早くここをいじめてほしかったんじゃないんですか、赤川さん?」
角井は乳首の周囲で円を描くように丹念に刷毛を這わせつつ、時折乳首をかすめるという動きを繰り返している。赤川は改めて唇を噛み締めながら、漏れそうになる呻き声を押し殺しているようだ。
「あんたも早く乳首を触ってほしいかな? どうだ、縛られて辱められるのも悪くないだろう。ちょっと揉んでやっただけでドMになっちまったんだかな」
木内も刷毛を奈々美の乳首の周囲に這い回らせ始めた。喘ぎ声を発しそうになるのを危うく堪えた。先ほど3人から責められたときに比べ、身体が敏感になっているような気がする。木内の言うとおり、マゾの気が強いとしても、それを認めたくはない。。
「止めてください……」
「まさか、乳首触っただけで逝ってしまうことはないだろう? 素直になったっていいんだぜ」
奈々美は木内の甘言に身を委ねてもいいかと思い、慌ててその考えを打ち消した。その間にも乳首はどんどん充血し、さらに尖ってきているのが目に入る。
(武彦さんなら乳首舐めて甘噛みしてくれるのに……)
「彼氏に乳首弄られてるときのこと思い出してるのか? あんたや赤川のこんな姿見たら、呆れちまうんじゃないか? 彼氏の妹にも嫌われるぞ」
「ホントに止めてっ!」
奈々美は叫んだ。武彦の妹で女子大生の咲良とは、2人でも遊びに行ったりする仲となっている。屈託ない性格で誰からも愛される咲良の愛らしい顔が脳裏に浮かび、奈々美はこんな男に屈してはならないことを思い出した。
「あふっ」
赤川の押し殺したような呻き声が聞こえる。角井は片方の乳首を刷毛で撫でつつ、もう片方の乳首を指先でやわやわと揉み立てている。赤川は顔だけでなく全身を赤く火照らせながらも、両足の指を丸めている。その姿は快感を堪えているようにも、湧き上がる愉悦に耐えるのを愉しんでいるようにも見える。
「お前を陥れた敵は頑張っているようだな。お前はどうだ?」
乳首の先端を刷毛の先が襲った。
「ひっ!」
「もっと色っぽい声を出したらどうだ?」
木内は乳首を指でつまむと、その先端を刷毛の毛先で擽る。首筋や耳朶には唇が這う。奈々美も赤川を習うように足先を丸めた。全身が紅潮し、うっすらと汗を噴き出していることには気付いていなかった。
「あん、そこイヤです……」
「何を言ってる。ここをもっと触ってほしくてウズウズしてたくせに」
木内は嗤いながら、乳首を刷毛で掃き清めつつ、もう片方の乳首を指先でつまみ転がした。
「あんっ……」
乳首から生じる快感が背骨を走り抜ける。先ほど木内にからかわれたように、乳首への愛撫だけで逝ってしまうこともあり得なくはないという気がした。ノートパソコンに目をやると、まだ残り時間は15分もある。
「もの凄い汗をかいてるじゃないか。5分で逝ったら、おれたちも面白くないがね」
奈々美は嘯く木内を睨み付けた。しかし、目力が残っているかどうかは自信がなかった。
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