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    「涙顔」(「繋留」⑤)

      拍手と歓声が響く中、入り口の方に小走りで駆けていく人影があった。その背後をもう一つの人影が追いかけていく。その後を追うと、小声での会話が聞こえてきた。
    「どうしたんだよ」
    「もう見てるの辛い……あたし、帰っていい?」
     こちらに見えた横顔は、観客の中で唯一の女だった。美奈より少し若いくらいだろうか。切れ長の目と形よく隆起した鼻、ほどよく膨らんだ胸が印象的だ。何よりもショートカットが似合っている。
    「面白くなりそうじゃん。今日はもう予定ないんだろ、最後まで付き合ってくれよ」
     やや軽薄な印象の若い男が女の前に立ちふさがった。
    「そこどいてよ、もう」
    「ここで帰ったら、もったいないですよ。しばらくゆっくりして行かれたらどうです?」
     男の横を通り抜けようとした若い女の肩を掴みながら、わたしは語りかけた。
    「何なんですか、怖い」
    「この娘に帰られたら困りますよね?」
     わたしの問い掛けに、男は目顔で頷いた。娘の膝裏を膝で押すと、他愛もなくその場につんのめった。悲鳴を上げる娘の上体を床に押し伏せ、両腕を後ろに回した形で押さえ付ける。木村が手にしていた麻縄で。腰の上で重ねられた両手首を素早く拘束した。
    「何するの、やめてくださいっ!」
    「まあまあ、お嬢さん。大人しくしないと縄がきつくなりますよ」
     娘の抵抗をいなしながら、木村は両手首を縛めた縄を娘の乳房の上に掛け回し、縄留めした。
    「ほら、もうこれで動けませんよ」
     木村は娘の上体を引き起こし膝立ちの姿勢を強いながら、さらに縄を重ねていった。わたしは娘の身体を支えつつ、どさくさに紛れてピンクのブラウスの上から乳房を触った。Cカップはあると思われる。
    「触んないで、イヤっ」
     娘は上体を捩りながら叫んだ。なかなか感度が良さそうだ。木村はその乳房の下にも縄を掛け、背中から首の左右に通した縄で上下の乳房の縄を引き絞る。顎の下あたりで切り揃えられた黒髪の毛先と、真珠のような小さなピアスが揺れた。木村が縄尻を取って娘を立たせた。
    「美奈が責められてる姿、お気に召しませんでしたかな? 自分も同じ格好になれば、そう悪いものじゃないということがお分かりになりますよ」
     わたしは木村が持ってきた縄束で娘の耳元や首筋を擽りながら言ってやった。娘はあまりの屈辱に声も出せずにわたしを睨んでいる。
    「ところで、この娘の名前は?」
     わたしは娘と一緒だった若い男に訊いた。男はあまりの成り行きのせいか、呆然とした表情を見せていたが、やがて言葉を絞り出した。
    「ち、知佳です」
    「いい名前じゃないか、知佳ちゃん」
    「あたしの名前バラさないでよ、正広……」
    「あ、あの……ここまでされると……」
    「なあに、悪いようにはしない、正広君にも知佳ちゃんにもね。帰るころには、君たちはもっと仲良くなってるかもしれないよ」
     営業用の笑みを二人に見せてやった。
     
     知佳はわたしと木村の手で、美奈の隣に吊り下げられた。その叫びや悲鳴は声にならない。頬を割るように猿轡を噛まされているからだ。わたしは知佳の背後からブラウスの胸元のリボンをほどいて前ボタンを外し、白地に薄桃色の刺繍が施されたブラジャーに包まれた乳房を露出させた。くぐもった呻き声に耳を擽られながらスカートをめくり上げると、同色のショーツに包まれた下半身が現れた。
    「ひはっ!」
     縛られた上体を捩りながら、知佳は悲鳴を上げた。木村がスカートのホックを外して脱がせると、肌色のストッキングに包まれた脚の細さが際立っていた。やや肉感的な美奈とは好対照だ。木村がブラジャーを押し下げて乳房を露出させると、薄いピンクの乳首が尖りを主張するように顔を出した。
    「おや、あなたもこういうの嫌いじゃないのかな? 乳首が立ってますねえ」
     わたしは知佳の乳首を指先で弾いた。知佳はやや太い眉根を寄せながら、わたしに恨みがましい視線を投げた。わたしが乳首を揉み始めると、木村がパンティストッキングの腰回りに手を入れた。
    「すいません、それは……。そこまで脱がすのはちょっと……」
     傍で心配そうに見守っていた正広が口を出した。知佳がその方に救いを求めるような目を向けた。
    「じゃ、パンツまで脱がすのはやめよう」
    「ホントですか?」
    「ただし、条件がある。これからちょっと彼女に小手調べを試してみるけど、最後までそれを我慢したら、このまま解放しよう」
    「そんな……」
    「大丈夫さ、彼女はそこでションベンを漏らした美奈ほどの経験はないだろう? 少し遊んでみるだけさ」
     こちらの様子を窺っていた美奈がわたしを睨んだ。足首の縄だけがほどかれていたが、脚を閉じる気力はないようだ。その近くには、竹棒が転がっていた。
    「こいつくらいなら、全然我慢できますよ。知佳さんは美奈さんほどエッチじゃないでしょう? 皆さん、さっきみたいに過激じゃありませんが、また愉しんでいただけますよ」
     木村が観客に向けて笑顔を見せた。

    「ん……んんっ」
     知佳の両乳房の裾から、震動するピンクローターが頂点に向けて渦を描くように上っていく。わたしと木村の二人で片方ずつの膨らみを分け合い、乳房の肌に触れるか触れないかのあたりでローターを這わせていた。
    「こんなの使ったことあるかな?」
    「今時の女の子はローターどころか電マなんかも使ってるそうですよ」
    「だったら、こんなヘボいオモチャなんかで感じないよね?」
     わたしは乳輪のあたりに当てたローターを乳首の先端に触れさせた。
    「んーっ、くふっ!」
     木村がわたしに倣うと、知佳は猿轡を噛まされた顔を仰け反らせた。
    「あん? こんなのイヤだって?」
    「やめてほしいんですか、知佳さん?」
     震動で乳首をこね回すと、知佳は哀願するような表情でわれわれを交互に見た。
    「じゃ、やめようかな」
     しばらくローターで乳首を責めた後、わたしはさらに充血した先端に吸い付いた。木村も同調し、われわれは乳首を舐め転がし、音を立てて吸い、甘噛みした。
    「あむっ! むむっ……」
     乳首を木村に任せ、わたしは知佳の背後に回って尻の方からショーツの舟底を擦り上げた。彼女は慌てて脚を閉じたが、一歩遅かった。
    「ひぎっ!」
    「ほーら、パンツの上からでもクリちゃんの場所分かっちゃった」
    「すっかり勃起してるんでしょ? パンツがしっとりしてませんか?」
     知佳の悲鳴が一段高くなったのは、そう問い掛ける木村が乳首の根元を噛んだせいかもしれない。
    「彼女は逝きやすい方かな?」
     正広は黙って首を振った。無言なのは、彼とのセックスでは見せたことのない感じ方を知佳が示しているためだろうか。
    「そうか、ならこんなイタズラではしたない反応なんかしないよな」
     わたしはショーツ越しに肉芽を捉えた。知佳の腰が左右に動く。知佳の股の力が抜けた瞬間、脚を開かせると、木村とともにさっきまで美奈の脚を拘束していた竹棒の両端に両足首を括り付けた。
    「美奈と同じ格好でつまらないでしょうが、知佳ちゃんが痴漢される様子をたっぷりご覧ください」
     わたしは尻の方から回した手で知佳の肉芽を攻略し始めた。人差し指と中指の根元で挟み、力を入れたり抜いたりを繰り返す。中指の腹で転がす。震動を加える。
    「ほら、こんな痴漢されるみたいな触り方されたら、感じるどころじゃないよな?」
     知佳は猿轡を噛みしめながら、喘ぎ声を懸命に押し殺そうとしていた。額には汗が滲み、形のよい顎を伝って胸の方に落ちる。木村は人差し指と中指の背で挟んだ乳首の先端を親指でリズミカルに転がしている。その様子を観客たちは声を押し殺しながら眺めていた。
    「なんか彼女、あまり感じてないみたいですよ」
     木村が知佳の耳たぶを噛みながらわざとらしく口にした。
    「そうなのか? パンツの上からちょっと触ってるだけなのに。クリちゃん、直に触ってほしいのかな?」
     わたしはショーツの中に手を入れた。
    「あれっ、アソコが随分熱いな。ヌルヌルだよ」
    「ひひっ、いはん」
     知佳の悲鳴が大きくなるのを尻目に、わたしは中指の腹で肉芽を転がした。しばらくその感覚を愉しむと、ショーツの中から引き出した指を知佳の鼻先に突き付けた。顔が背けられた。
    「なあに、これ? 指から湯気が出てるよ。それに、この濡れよう」
     指先を観客にかざして見せた。
    「おぉ、濡れてる!」
    「この女も逝かされちまうか?」
     下卑た笑みを浮かべた男たちから喜びと期待の声が上がった。
    「感じちゃったら、この娘はパンツも脱がされちゃうんですよ。そこまでエッチじゃないでしょう、きっと」
     わたしはまた手をショーツの中に差し入れると、肉芽を転がす責めを再開した。知佳の喘ぎがまた店内に響く。
    「マジ、痴漢みてえ」
     オタク男が叫ぶ。わたしは右手で肉芽を責め立てる一方で、知佳の臍の方から左手もショーツの中に入れた。前後から肉芽を挟撃してみることにしたのだ。木村が乳首責めを続けている中、知佳の腰が小刻みに捩られる。
    「はが……んぐっ……」
     指の動きを激しくした。知佳は腰を震わせ、顔を小さく左右に振り立てた。
    「ひ……ひぐっ……」
     その瞬間、全身の痙攣が大きくなった。一瞬の間の後、知佳は項垂れた。わたしは猿轡を外しながら、知佳に尋ねた。
    「まさか、逝っちゃったんじゃないよね?」
    「逝ったら脱がされるんですから、そんなことはないでしょう」
     木村が調子を合わせた。
    「じゃ、観客のみんなに訊いてみましょう。逝きましたか、この娘は?」
     正広が気が気でない様子で周囲を見回す中、観客から声が飛んだ。
    「逝った逝った!」
    「早く脱がせろぉ!」
    「逝ってませんっ! 正広君、助けてっ」
     涙を浮かべた知佳が正広に縋るように叫んだ。正広は狼狽えたように曖昧な頷きを繰り返すだけだった。
    「ほぉ、逝ってないんですか。なら、美奈に訊いてみよう。この知佳ちゃんは逝ったかな?」
     傍らで吊られた美奈はしばらく、痛ましげに知佳の顔を見つめていた。知佳が涙顔を美奈に向けている。
    「……逝ったと思います……」
    「そんなっ!」
     知佳の叫びに美奈の言葉が重なった。
    「嘘はつけません……。この娘、逝ってしまいました」
    「イヤっ。やめてっ」
     早速、木村が知佳のショーツを膝のあたりまで引き下ろした。逆三角形のやや濃いめの茂みが姿を見せる。
    「すっかり愉しんでたじゃありませんか。嘘を吐くとお仕置きですよ」
     木村が繊毛を梳くように撫でた。知佳の絶望の悲鳴が上がった。
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