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    「数珠」(「容疑者K」⑤)

    「さ、不貞行為の動かぬ証拠を押さえたし、慰謝料が発生するわね。あんたとこの男にいくら請求しようかしら」
     麻季子は泣き咽ぶ香奈に意地悪な視線を投げつける。
    「そんな……。あたし、お金持ってないんです。何でもしますから、それだけは……」
    「親に借金でもしてもらうしかないわね。あんたのお姉さん、今度結婚するんでしょ? 式を延期してもらいなさいな」
     香奈自身だけでなく、家族の情報もこの女に把握されているらしい。しかし、香奈にはある考えが浮かんだ。
    「で、でも、あなたが見たってだけでしょ? 証拠なんかないでしょう」
     震え声の訴えを麻季子は一笑に付した。
    「おバカだわね、あんた。あれに気付かなかったの?」
     麻季子が指差した先を見ると、香奈の斜め前の壁際に置かれたテーブルの上に、鞭やバイブなどの責め道具とともに、さり気なくレンズが光っていた。
     テーブルに載せられたものの中から麻季子が取り出したのは家庭用ビデオカメラだった。カメラの録画内容を確認した麻季子は、皮肉混じりの笑顔を浮かべた。
    「あんたと吉本がセックスしてる場面、バッチリ映ってるわよ。アダルトビデオにして売り出してもいいくらい、鮮明な映像だわ。視てみる?」
    「イヤですっ、動画消してください、お願いですからっ」
     香奈は緊縛された身体を捩って泣き叫ぶと、やがて首を折った。吊り縄に支えられた身体は、小さく揺れていた。気を失ったようだ。

     臀部に走る鋭い痛みに、香奈は我に返った。
    「随分気持ちよさそうに寝てたけど? 図太い神経してるのね」
     スーツの上着を脱ぎ、薄紫のブラウス姿となった麻季子が香奈の尻にバラ鞭を振るっていた。数発打ち込まれるたびに、香奈は身体を仰け反らせて泣き叫ぶ。
    「さ、これから愛人にお仕置きさせてもらうわ。あたしは妻だから、そのぐらいやっても罰は当たらないわよね」
     お仕置き――。麻季子の目は真剣だ。今まで吉本が香奈に施してきた「お仕置き」など児戯に等しかったことを、思い知らされるのだ。香奈は本気で震え上がった。
    「せっかくだから、あの人にもこの様子を見物してもらうわ」
     麻季子が顎をしゃくると、香奈の背後には、トランクス一丁の姿に全裸に剥かれた吉本が床に転がされていた。後ろ手錠をはめられ、足は皮の足枷に縛られ、ボールギャグを口に噛まされながら呻いている。
    「あたしも、あんたたちの関係を知って以来、SMってものを勉強したの。随分と過激なことやってたのね」
    「あたしたちはそんな……」
    「惚けなくてもいいの。あんたたちが行ってたホテルは、みなSMルームって言うの? それ専門の部屋があるそうね。六本木にある有名なSMホテルとか、縛り好きがばかりが通う渋谷の和風ラブホテルとか」
     香奈は黙り込んだ。
    「あ、吉本にはめた手錠、あんたが新宿で引き回しみたいなことされたときに使ったものよ。あの男も大概だけど、そんなのに喜んで付き合うあんたも相当なもんだよね」
     無言で顔を左右に振る香奈をじっとりとした眼で見やりながら、麻季子は続けた。
    「このお部屋、随分と色んな道具があるから、あんたへのお仕置きも色んなことができそうね。例えば、これとか」
     香奈の鼻先に突き付けられたのは、長めの数珠のようなものだった。直径2センチほどの珠が10個ほど連なっている。
    「……何それ?」
     香奈がようやく搾り出した声は、底知れぬ恐怖に震えていた。
    「知らないふりするんじゃないの。アナルビーズってやつ」
    「イヤですっ、そんなの! 変態っ」
    「面白いわね、変態行為ばかりやってたあなたの言葉とは思えない。さっき、吉本はチ×ポをあなたのお尻に入れようとしてたじゃない。そっちも経験者じゃなかったの?」
    「違いますってば!」
     後門にローターを挿入され、股縄を締め込まされたまま放置された先日の羞恥が蘇ってきた。
    「じゃ、あたしがあなたのお尻の処女を奪うことになるのかしら?」
     麻季子はコンドームをはめた指先にローションをたっぷりと垂らし、香奈の後門をマッサージし始めた。
    「ひっ! 止めて、そんなことしないでぇっ……」
     同性、しかも愛人の正妻に後門を犯される恐怖と羞恥に香奈は全身に走る悪寒と戦いながら、悶えた。
    「あんたの言葉とは違って、後ろの穴は素直よ。ほーら、指がつるっと入っちゃった」
    「止めてぇ、そんな奥に入れないでぇ……」
    「まだ2センチぐらいしか入ってないわよ。大げさな」
     嗤いながら麻季子はゆっくりと指を左右に回転させた。香奈の悲鳴が大きくなった。
    「ほら、吉本を見なさい。凄い眼でこっちを睨んでるわよ」
     吉本は不自由な身体を蠢かせながら、香奈を凝視している。トランクスに覆われた股間は明らかに膨張している。香奈は反射的に目を背けた。
    「見なきゃダメよ。これからあんたのお尻の穴の貫通式をやるんだから」
     ローションを大量に塗りつけたアナルビーズが後門に宛てがわれる。暴れる香奈の腰を左腕で巧みに押さえ付けながら、麻季子はビーズを沈めていった。
    「イヤっ。イヤぁっ!」
    「素直に呑み込んでいくわよ。やっぱりアナルセックスも経験済みなんじゃないの? ほら、もう珠が5個入った。後5個、頑張って呑み込んでね」
     麻季子は慎重にアナルビーズを挿入していきながら、片方の手で香奈の乳首を揉み転がした。
    「ああっ……」
    「何これ、乳首が随分固くなってるじゃない。あ、オマ×コからは滴がいくつも垂れてきてるわ」
    「そんな嘘です……」
    「ホントよ、ローションなんか使わなくても、あんたのお漏らししたものをビーズに塗ってもよかったわね。こうすると、もっと漏れてくるでしょ?」
     屹立した肉芽を麻季子の指が弾いた。
    「ああっ!」
    「顔に似合わず、クリちゃん大きいのね。しばらくこうしててあげるから、早く全部の珠を呑み込んじゃいなさい」
     間もなく全10個の珠が香奈の後門に挿入された。香奈は苦鳴を漏らしていたが、それは必ずしも苦痛だけがもたらしたものではなかった。

    「アナルビーズのご感想はいかが?」
    「何か変な感じです……。早く取ってっ」
    「言われなくても取ってあげます。けど、どうせならもう一つの穴にも何か埋めてあげたいわね」
    「ダメッ、それは許してっ」
    「だって、こんな涎タラタラなんだもん。何とかしてあげなきゃ可哀想だわ」
     麻季子はビデオカメラと責め道具が置かれたテーブルの上からバイブを取ってきた。細長い男根部の先端は微妙に膨らみ、女体の奥を柔らかく巧みに刺激する。図らずもそれは、香奈が最も気に入っている道具だった。香奈の目の前でバイブにコンドームを被せると、麻季子はそれを前門に差し入れた。
    「許してっ」
    「自分から招き入れてるくせに。あら、中は意外に狭いのね。吉本の太いのを咥え込んでたとは信じられないわ。キュッキュッと締め付けながら、どんどん入ってく」
    「ひっ!」
    「こんなものもあるのね。SMの道具って本当に至れり尽くせりだわ」
     それは黒革の褌のような形をしていた。ベルトのようなものを腰に巻き付けると、臍の部分から黒い帯のようなものが垂れ下がる。これを股間部分に通してベルトの腰骨の辺りに留めると、ちょうど褌で前後のバイブが固定される状態となる。
    「ああ……」
     香奈は思わず前後の穴にバイブを挿入された腰を前後に揺すった。
    「まだ気持ち良くなるのは早いわよ」
     皮が肉に打ち付けられる音が部屋中に響いた。麻季子は鞭打ちを再開したのだ。
    「痛いっ! 鞭は嫌いっ!」
    「嫌いな鞭が好きになれるように、オ××コとお尻に詰め物をしてあげたんじゃない。ほらっ」
     麻季子の鞭の扱いは堂に入っている。ただ力任せに打つだけではなく、香奈のツボを巧みに突く絶妙な力加減とリズムが備わっている。鞭を好きになれなかったのは、吉本の打ち方が単調で、加減もリズム感もイマイチだったためだと香奈は悟らされた。
    「く、口惜しいっ!」
    「愛人の妻に鞭打たれるのが口惜しいの? そうじゃないでしょ、鞭が考えてたより気持ちいいからでしょ?」
     快美感をもたらすのは鞭打ちだけではなかった。前後の穴で食い締めたそれぞれの道具が、香奈の性感を直撃してくるのだ。肉壺はバイブを締め付けるたびに樹液の湧出を促し、後門はビースの形に馴染んできている。腰を前後に揺するたび、鞭が一発入るたび、前後の性感が激しく揺さぶられる。いや、今現在香奈が味わわされているのは、前後に埋められてものを挿入されているような感覚だ。香奈は悲鳴が噴き出るのを懸命に堪えた。苦痛のためではない。図らずも絶頂に達したのを麻季子に悟られないためだ。
     数十発の鞭打ちを喰らわせた後、麻季子は額から汗を垂らし、息を弾ませながら香奈に意味ありげな視線を向けてきた。香奈は麻季子以上に全身を汗みずくにし、顔と尻を真っ赤にしながら、肩で息をしている。
    「もうイヤ……」
    「なら、鞭はそろそろ勘弁してあげる」
     麻季子はバイブを固定しているベルトを外した。
    「これも抜いてあげましょうか?」
    「お願いします……」
     麻季子はアナルビーズをゆっくりと引き抜き始めた。
    「ダメっ、気が変になるっ!」
    「これはね、ゆっくり抜かないとお尻の穴が傷ついちゃうんだって」
     一つの珠が後門を通っていくごとに、香奈は排泄時のような奇妙な感覚に襲われた。恥ずかしい。でもそれだけじゃなくて、何か気持ちいい……。香奈の頭と性感は混乱の極みに追い込まれる。最後の珠が抜かれたとき、香奈は安堵感と物足りなさのない混じった感情に支配されていた。
    「後ろも悪くなかったでしょ?」
     香奈は俯いたまま、それには応えずに麻季子に懇願した。
    「バイブも抜いてください……」
    「まだ素直になりきれてないのね」
     麻季子はバイブを前後に抽送し始めた。
    「もうイヤっ、いじめないでっ! 十分仕返ししたでしょっ?」
    「ホントは思いっ切り逝きたいんでしょうに。さっき鞭で打たれながら一度逝ったわよね? もっと気持ち良くなりたいんでしょ」
     愛人の妻に鞭打たれて達してしまったこともばれていた。香奈はわき上がってくる激しい羞恥に、顔を上げられなかった。
    「泣きながら唇を噛みしめてる顔、とっても愛おしい。吉本が骨抜きになるわけよね」
     気付くと、吉本は拘束された身体を膝立ちにして、血走らせた視線を香奈と麻季子に送っていた。むろん、トランクスに包まれた部分は、一目で分かるぐらい屹立していた。
    「ほら、吉本もすっかり興奮してるわ。もっと淫らな姿を見せてあげなさい」
     麻季子は抽送を再開した。長く伸びた乳首を舐めしゃぶり、根元を甘噛みし、粘膜と粘膜が擦れ合う音を盛大に鳴らしながら吸い立てる。香奈の股間からも肉が擦れる湿った音が奏でられ、白濁した淫蜜が涎のように床に滴り落ちていた。時折、麻季子が抽送を中断し、指で肉芽を揉み転がす。ネイルアートが施された爪で掻く。爪と爪で軽く挟む。
    「ああっ……いいっ……」
     既に香奈は軽い絶頂を数回迎えていた。しかし、まだ大波は来ていない。そのもどかしさを吹き飛ばすように、麻季子はバイブの振動スイッチを入れた。
    「ぐぅっ……。それキツいっ」
    「キツいぐらいの方がいいんでしょ?」
     振動するバイブを激しく麻季子は抽送した。前後に動かすだけでなく、左右に回したり、体奥に当たった先端をグリグリと擦り付けるような動作にも及んだ。香奈の性感が爆発しようとすると、バイブを引いて入り口だけの微妙な刺激に転ずる。しばらくして再び体奥を蹂躙する。香奈の性感は、こうした駆け引きに乗れるほどのしたたかさはなかった。もはや全身を振り立て、麻季子に翻弄されるがままに腰を淫らに蠢かせるしか対抗手段はなかった。
    「ああん、もうダメですっ! 逝かせて、逝かせてっ! お願いです、あたしが悪かったんですっ……」
    「言ったわね」
     麻季子は最後の追い上げに掛かった。香奈は喘ぎか叫びか分からない声をまき散らし、涙と涎にまみれた真っ赤な顔を仰け反らせた。
    バイブが体奥を荒し、突きまくると、香奈の性感は決壊した。身体がヒクヒクと痙攣している。
    「ああっ、ひぐぅっ……。ぎ、ぎもぢいいわっ! うぐっ、逝くっ! 逝っちゃうっ……。もう許してっ!」
    「許さないぞ」
     絶頂に霞んだ目に、麻季子が両手を背中に捩じ上げられていく姿が映った。いつの間にか拘束を抜けた吉本が、悽惨な笑顔を香奈に向けながら、横座りとなった麻季子を後ろ手に縄打とうとしていた。
    手錠の鍵を見つけたのかも知れない。
    「ああ、吉本さん……」
     香奈は安堵に全身の力が抜けた。吊り縄がなければ、その場に崩れ落ちていたに違いない。安心感が絶頂を迎えた性感を優しく包み込む。多少の優越感をもって麻季子を見下ろすと、彼女は何の抵抗もせずに紅色の麻縄で縛り上げられていく。軽く目を瞑ったその表情には、安心感とある種の媚びが浮かんでいた。
    「その人を縛ったら、あたしの縄をほどいて」
     2人の様子を訝しみながらも、香奈は吉本に声を掛けた。
    「ダメだね」
     つれない返事だった。
    「どうして……?」
    「この手錠、見てみろよ。先月、新宿の市中引き回しプレイで使ったやつだ」
     麻季子を縛り終えた吉本が、香奈の目の前に示した手錠の根元にある突起を押した。すると、手錠の輪はカチリと音を立てて外れた。
    「どういうこと?」
    「簡単に外せるんだよ、この手錠は鍵がなくても。お前もそれに気付いてれば、縄手錠を打たれた姿でホテルに連れ込まれなくても済んだってわけ」
    「そんな……」
    「ふふ、旦那の浮気現場に乗り込んできた妻が、素直に縛られてくのもおかしいと思わない?」
     麻季子は悪戯っぽい瞳を香奈に送った。吉本は麻季子を香奈の正面に立った姿勢で天井から伸びたフックに繋いだ。背後から伸びてきた吉本の手で乳房を揉まれ、喘ぎながら麻季子は続けた。
    「あん、久しぶり……。あたしたちは始めっから離婚する気なんてないの。あんたのことも公認。どんなことをしたか、詳しく報告してもらったけどね」
     呆気にとられる香奈を面白そうな表情で眺めながら、吉本は後を引き取った。
    「こいつがしばらく家にいなかったのは本当だ。知ってるだろ、自動車部品メーカーの海外営業部の総合職だ。この1ヵ月間はずっと出張中だったんだ」
    「帰国したらひと月ぶりのSMプレイだから、もっと刺激的にしたいと思ったの。あ、あなたは知らなかったでしょうけど、あたしは両刀。男にはMだけど、女の子にはSなのよ。あなた、顔も身体も責められるときの反応も、ホントに可愛らしいわね。いじめるのはちょっと辛くなってきたわ」
     そんな褒め方をされても、香奈はちっとも嬉しくはなかった。
    「あたしと結婚するって、嘘だったの? ねえ、嘘だったのっ?」
     香奈は涙を流しながら、精一杯の怒声で2人を問い詰めた。
    「残念だが、妻帯者の口約束を信じるような頭の足りない女は、結婚相手としては不適格だな。しかも、前の上司にも同じように騙されたんだよな。それがばれて、派遣先を切られたんだもんな」
     思い出したくもない過去の痛みをぶり返させられ、香奈は後悔と口惜しさに唇を噛んだ。
    「その代わり、しばらくはおれたち夫婦の共有奴隷として飼ってやる。週末ごとに麻季子にネチっこくいたぶられ、おれに激しく責められるんだ。たまにはおれの知り合いのS男を呼んで4Pするのも悪くないだろう」
    「イヤです……。もう家に帰してっ」
    「もう終電の時間はとっくに過ぎてるぜ。朝までゆっくりしていけよ」
     吉本は麻季子のブラウスの前をはだけて乳房を露出させズボンを脱がせた後、香奈の脚の縄を解き、フックから降ろした。だが、後ろ手の縛めはそのままだ。
    「まずは、おれの妻に逝かせてもらったお礼をしてもらおうか。こいつのオマ×コを舐めろ」
    「それ、恥ずかしい。どんな仕返しをされるのかしら?」
     麻季子は期待に潤んだ視線を吉本に向けた。吉本は香奈の脚を縛り付けていた竹棒に、麻季子の両足首を固定した。先ほど香奈が責められていたときと同じ格好だ。
    「フェラはまあまあだが、それだけでおれを逝かせたことはない。麻季子も恥ずかしがらずに、どこをどう舐めると気持ちいいか教えてやれ」
    「やりたくありませんっ!」
     香奈の叫びは一本鞭の痛覚に遮られた。
    「いいからやるんだよ。あんまり下手くそだったら、後でお仕置きに浣腸するぞ」
     吉本は香奈の髪を鷲掴みにし、顔を揺さぶり上げた。
    「ねえ、喜多さんは?」
    「おっと忘れてた」
     吉本はスマートフォンを取り出して電話を掛け始めた。
    「ああ、喜多さんですか? ご無沙汰しております。いや、今わたしの妻と一緒に例の香奈って女を調教してたところなんですよ。妻のオ×ンコを舐めろって命じたら、抵抗しやがるんでね。夜分遅く申し訳ありませんが、これからご足労いただけませんか? あ、ちょうど例の埼玉の女を車で家に送ってきた帰りですか。もう関越を下りたところ? あと10分で着く? お願いしますよ、是非」
    「喜多さんって、あたしたちの遊び仲間。師匠と言ってもいい存在よ。あの方に掛かったら、朝には素直に言うことを聞く女になってるわよ、香奈さん」
    「香奈が抵抗するから、4Pをやることになっちまったんだ。もう少し先の予定だったんだがな」
     含み笑いを漏らす鬼畜のような夫婦の足元で、香奈は蹲って嗚咽していた。後ろ手に縛られた上体を折って土下座したような姿勢は、香奈の今後を暗示していた。





     
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