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    「部屋」(「連行」②)

     後部座席のドアが引き開けられる音がした。
    「早く降りなさい」
     後ろ手に縛られた上半身を押された。こわごわと地面に足を付ける。ふらついたところで、背中の縄尻を引かれ、強引に立たされる。女刑事に背中を小突かれ、歩くよう促されるが、恐怖と抵抗感のせいか脚が前に進まない。
    「大した距離じゃないから、さっさと歩くのよ」
     女刑事は尻を蹴飛ばした。思わず奈々美は背後を睨み付けた。
    「まあまあ、暴力はやめたまえ、赤川君」
     木内に赤川と呼ばれた女刑事は答えた。
    「でも……」
    「どうしても歩きたくないなら、こうしてやればいいんだよ」
     木内はポケットから赤い首輪を取り出すと、奈々美の首に嵌めた。
    「く、首輪なんていや……」
     いくら拒んでも、背後から赤川に顔を押さえ付けられていては、抵抗のしようがない。首輪の金具に縄を結び付けると、木内はそれを前に引いた。とても警察のやることとは思えない。しかし、首は容赦なく締まってくる。後ろ手に縛られた上体を前に倒し、へっぴり腰のみっともない姿勢になりながら、奈々美は呻いた。
    「うぐっ! 苦しい、歩きます、歩きますから」
     悔し涙を浮かべて歩み出した。20メートルほど進んだところに扉があり、奈々美は足を縺れさせるように入口を潜った。そこから数メートル進んだところの右手、人の顔のあたりの高さに鉄格子がはまった鉄扉があった。そこで木内が足を止めたとき、奈々美はそこにへたり込んだ。
    「誰がしゃがみ込んでいいって言った? ちゃんと立つのよ、これからあなたをたっぷり取り調べるんだからね」
     背後から鋭い叱声が飛び、尻を蹴飛ばされた。乱暴に縄尻を引かれて立ち上がらされると、首輪を前に引っ張られた。鉄扉が開き、その向こう側に引きずり込まれると、目の前の光景に震えが来た。
    「な、何ですかこれ……?」
     20畳ほどもありそうな部屋はコンクリートの床が敷かれ、奥の方には鉄格子がある。部屋の真ん中にはチェーンブロックがぶら下がっており、天井に縦横に張り巡らされたパイプからは複数の鎖や麻縄が垂れ下がっている。壁には鞭や縄、手錠や枷のほか、何に使われるのか想像も付かない責め道具のような物が無数にぶら下がっている。部屋の隅には、遊園地にある木馬に似た不気味な道具が置かれており、もう一方の壁には大きな鏡が貼り付けられている。
     奈々美はその場にヘナヘナとしゃがみ込んだ。刑事たちはニヤニヤと笑いながら、奈々美が怯える様子を眺めている。
    「あなたはちょっと手強そうだからね、しっかり自供を取るために、万全を期したってわけ」
    「で、でも、こんな拷問道具みたいなのって……」
    「拷問とは人聞きが悪いね。われわれはあくまで紳士的に事情聴取を行うつもりだよ」
    「そうですよ。われわれが違法な取り調べを行っていないという証拠を残すために、今回の尋問の様子は全て録画することになっている。撮影はお願いできますか、原さん」
     原と呼ばれた大柄な眼鏡の刑事は、鉄格子の中に入ると、ハンディカメラを取り出してきた。
    「この映像は永遠に残りますからね、下手に供述を渋ると、後から恥ずかしい思いをさせられますよ」
     眼鏡の奥の目が淫猥な輝きを帯びた。奈々美は天井から垂れ下がっているチェーンブロックに吊された。爪先立ちになるような格好だった。
    (……ああ、こんなことって……)
     強気な奈々美も、思わず涙を零した。
    「こんなんで泣いてるんじゃないわよ。原さん、これから撮影をお願いしますね」
    「了解」
     原はカメラを構えた。木内はにやけ顔を引っ込めると、奈々美に近付いてきて背後から髪の毛を掴み、顔を晒し上げた。
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