額には脂汗が滲み、若干荒れた吐息を漏らす唇は半開きとなり、あごは斜め上を向いている。小柄でやや脂の乗った身体は、上半身を後ろ手に固縛され、胡座をかく格好で縛られた脚の奥の暗がりは、滑った光を帯びているようだ。Dカップの膨らみの先は、やや茶色がかった桜色のつぼみをそそり立たせている。
「どうだ、薬は効いてきたか?」
「なんか、身体が熱い…」
非合法な薬物を使っているわけではない。彼女の身体の中心に塗り込められているのは、「セイノール」という女性用性ホルモン軟膏。女性の不×症や性×減退に効能があるとされる。厚生労働省から販売を許可され、薬局でも入手可能な歴とした一般用医薬品だ。不感×に効果があるなら、ラブポーション(いわゆる媚×)としても使えるかどうかを、試してみることにした。先月に三十路を迎えたばかりで、縛られることに興味があると言っておれの前に現れた彼女に。
全×に剥いた彼女に胡座縛りを施し、秘すべき部分の呼び鈴と扉の入り口にセイノールを塗布してから、10分ほどが経っていた。半眼になった双眸は油を流し込んだような鈍い輝きを放ち、喘ぎ声は次第に高くなってくる。達磨のように丸められた不自由な身体を前後左右に小刻みに揺らしている。熱を帯びた部分を床に擦り付け、体内でうねりを高めている情感をなだめようとしているのかも知れない。側の椅子に腰掛けて煙草を吸いながら、おれはそんな彼女の様子を目で愉しんでいた。
「随分ご満悦みたいじゃないか」
おれは立ち上がって彼女に近づき、胸の突起を軽く摘んでクリクリ転がした。
「あぁん!だってたまらないっ」
「まだ何もしてないんだぜ」
「縛られて放って置かれたら、それだけで切なくなっちゃった…」
胸の先を弄られるのが心地良いのか、喘ぎ喘ぎ彼女は言った。ふと下に目を落とすと、彼女の中心から漏れ出たと思われる粘液が、床に滴っていた。胡座を組まされた足首の下に、それは数センチ平方メートルの水たまりを作っている。
「うわっ、何だよこれ?もうよだれ垂らしちゃってる」
「イヤイヤっ、言わないで」
「縛って薬塗ってから、10分しか経ってないのにこれか。イヤらしいなあ」
やはり、×薬の効果がてきめんに現れたのだろうか。おれは内心ほくそ笑みながら、わざと呆れた表情を作り、彼女の羞恥心を言葉でさいなむ。その間にも、熱くて粘度を増した液体はますます零れてくる。おれは自分の足を彼女の薄暗い部分に差し入れた。既に表皮の外に飛び出しているメノウに足の親指をあてがい、振動を加える。
「あたしのそこ、足で弄られるようなものでしかないの…?」
細く整った眉を八の字にし、恨みのこもった視線をおれと交錯させる。おれが黙ってバイブレーションを強めると、彼女は「でも気持ちいぃっ」と叫び、足指による屈辱的ないたぶりに悶絶する。
「こんなに床を汚しやがって」
おれは彼女の髪を引っつかんで身体を少し移動させ、胡座縛りのまま頭を床につかせた。すると、脚を組んだまま腰を立てた格好になり、彼女自身が溢れさせた水たまりが眼前に来る。「座禅転がし」というやつだ。
「ほら、不始末の掃除をしろ。濡らしちまったところを舐めてきれいにするんだ」
「そんな、恥ずかしい…。許して…」
「なら、こうすればやる気になるか」
座禅転がしにされ、卑×な表情をさらけ出した彼女の源泉に足の親指を挿入し、揺すり立てる。源泉の至近距離にある宝玉に、右手の中指の腹をこすり合わせる。すると、彼女の口から溢れる声が、音階と音量を上げてくる。
「もっとこうやって欲しいか?」
「は、はい…。掃除しますから、もっと気持ちよくして…」
彼女が舌で床の汚れを拭い始めた。ご褒美に宝玉の左右を人差し指と薬指で押さえ、中指で宝玉そのものに淫らな回転を加える。
「あぁ、それ大好き!」
「このまま続けて欲しいのか?」
「お願い…」
座禅転がしのまま、おれの指弄に翻弄されて断続的な喘ぎ声の間隔を狭める彼女の姿を見て、おれも床掃除なんかどうでも良くなってきた。彼女の身体がピクッピクッと痙攣し始め、既に天国の扉をノックしつつある。横を向いた顔は、惚けた表情を隠そうともしていない。たまには、素直に逝かせてやるか。そう思う間もなく、彼女は絶×を告げる声を何度も漏らしつつ、海老のように跳ねる身体はしばらく硬直を見せた。